第51 回愛媛マラソンもいよいよ残り5キロになった。過去3回の大会はすべてここからペースを上げた。残り5キロで3時間03分55秒ということは、3時間28 分前後が狙える。それに、今回も35キロからの平田の坂でペースアップできたということは、35キロの壁もなかったということだ。よし、少なくともあと1 キロは下り坂の惰性の恩恵を受けよう、と思ったものだ。 だが、35キロから35・195キロまでの間に60秒かかったことに、し ばらくしてから気づく。というより、既に平田の下り坂の惰性で走っていない自分に気づく。そういえば、昨年、下りの惰性で1キロは持つだろう。そして、あ との4キロの悶絶があるのか興味があると考えた。そして、その時が1年の時を経てやってきたのだった。
異変に気づいたのは、38キロ地点の対面にある志摩整形外科が見えてきたときだった。そういえば中間点付近から妙な体の重さを感じてはいたが、ここへきてその原因が腰にあったのではないかと思い始めた。昨夜の妙な腰の痛みはやはりフルマラソンではごまかしきれなかったか。 38キロ3時間07分55秒とこの1キロは5分00秒。目の前に大川の天井川が待ち構える。その坂にある残り4キロを3時間09分00で通過。終盤でペースアップするどころか、ここへ来てペースが落ち始めた。 普通、30キロ又は35キロの壁という。また、その壁でペースを落とした方も、最後の数キロは再びペースアップできるケースもある。だが、この残り5キロを切ってからのペースダウンというのは一体何なのか。 そういえば、昨年9月13日にも10キロを過ぎて下半身が重くて走ることが苦痛になることがあった。原因はやはり腰ではないか、と思ったりもしたが、このときはまだ暑かったから途中給水や水浴びで時間を稼いだものだ。 だが、今日はそうはいかない。ここまできた以上、3時間30分を上回るわけにはいかない。だが、その苦しみは永遠ではない。あと20分を切った。 そうひたすら考えながら、往路との重複区間を離れ、左折していく。この場所に撮影場所があるのだが、もうそれどころじゃない。 まもなく大きく右へ右へとカーブする地点へ出る。この区間は松山方向2車線、北条方向1車線という変則3車線道路で、その松山方向2車線がコースになっている。 ここはもう最短距離しかない、とばかりに道路中央部をひたすら走る。39キロ3時間13分02秒。この1キロに5分07秒とついに1キロ5分超。ペースが確実に落ち始めた。残り3キロを3時間14分05秒で通過。 ここで考えたことは、ただひとつ。サブ3・5を達成するまでに残された貯金はあと55秒。この貯金を切り崩す。次の1キロでチェックし、5分10秒以上かかるようならば、あとは決死のスパートしかない。 それが結論だった。 この大きな右方向へのカーブは本当に長く感じた。途中、コーンを蹴りそうになったほどだ。確かに尋常な状態ではない。そして、直線になったところで、遥か向こうに40キロ地点となる増田病院が見えてくる。 40キロ3時間18分12秒、35〜40キロは24分57秒だが、これは平田の下り坂で稼いだタイムであって、この1キロはついに5分10秒まで落ち込んであり、現在は既に5キロ25分台へ突入していることは明らかだ。 とりあえず歩幅を大きくしてみよう。ペースが落ちてはいるものの、サブ3・5に致命傷となる落ち方まではしていない。まだ望みはある。あと10分少々の我慢だ。 あと2キロ地点を3時間19分15秒で通過。とにかく次の1キロを5分15秒以内で走ることだ。 本町へ入り、道路が片道3車線となる。ここに最後の給水地点があるが、これはもう無視だ。腰の異状、風邪気味、向かい風、体感温度 上昇の複合要素による体調不良だったとしても、本当の脱水症状でなければ、あと1キロ少々で給水したところで、あまり意味はない。それよりも時間が問題 だ。 41キロ3時間23分22秒、この1キロを5分10秒で通過。さらに、残り1キロを3時間24分23秒で通過する。 ペースは全く上がらない。が、落ちてもいない。落ちていないのであれば、あと1キロにもう5分40秒もはかからないだろう。 苦しいながらも、ようやくここでサブ3・5を確信した。 もう無理をする必要はない。平和通りを過ぎても、札の辻を過ぎて堀端が見え始めても、無理をしてペースを上げなくても良い。42キロを過ぎてからペースを上げたので良いはずだ。 そして、ついに42キロを3時間28分27秒で通過。脳裏にペースが5秒だけだが上がったことと、残り195メートルに1分30秒もはかからないはずだと思ったところで、ペースを上げて西堀端を左折する。 苦しさもあと1分。いや、さすがに最後は苦しさもマヒをしてくれたようだ。目の前にはまだ3時間29分で秒の10の位が「1」のまま。 そのままガッツポーズ!いや、2本目のシートにあわせてガッツポーズだ!最後はその余裕があった。 タイム3時間29分21秒。なんとかサブ3・5を達成した瞬間であった。 ちなみに、妻子はゴールしたところを見てくれており、すぐに声をかけてくれたが、私自身はゴール後かなりふらついていた。ここで初めて軽い脱水症状だったことに気づいたのでもあった。(2013.02.14) |